最近、部下が目を合わせてくれない。
部下に距離を置かれている感覚が強くなっている。
職場で部下の反発を感じているけれど対処法が見つからないと悩んでいませんか。部下に無視されたり、距離を取られると上司としては、やりきれない気持ちになりますよね。
この記事では「部下が目を合わせてくれなくなった」「部下に距離を置かれているように感じる」と悩んでいる管理職の方へ部下との関係改善の対処法について解説します。
問題の根本を把握することで部下の不満や不安、反発心の原因を理解し適切な対処法で関係を改善することができます。
わたしも会社員時代に部下から無視された経験や上司を毛嫌いした経験があります。経験や人事を通じて得た人間関係を良好に保つためのヒント、役所の労働相談にくる管理職へのアドバイスを共有したいと思います。
部下に嫌われる上司の特徴
部下に嫌われる上司の特徴は、大きく分けて「心理的な要因」と「環境的な要因」の2つの側面があります。当てはまるかチェックしてみてください。
感情的な上司は信頼関係や尊敬を損ない、気分で態度が変わる上司は部下の信用を失い、部下の話を聞かない上司は疎外感を与えます。
さらに、評価基準が明確でない上司は部下の不安や不満を引き起こして、やる気を奪ってしまう。
仕事量が多く残業が当たり前の職場や、昇給がないなど社員のやる気を奪いその不満が直属の上司に態度で表現している場合もあります。
部下の不満が「上司本人」または「組織や会社」どちらに向けたものなのか見極めないと対処法が変わってきます。
部下が上司を無視する原因
部下に無視される状況を具体的にイメージしてみてください。どのようなタイミングで、どのような態度で無視されるのでしょうか。
上司が嫌いな理由
会社に不満があり上司を無視するケース
部下との関係性や会社の雰囲気が原因で無視するケースもあります。
会社に不満がある場合、部下は上司に対して会社への不信感や不安を無視することで気持ちを表現しようとすることがあります。
上司を無視する部下と距離を縮める方法
今は、部下から無視されて対話すらできていない状態でしょうか。まずは話せる状態に持っていかないと、原因がわからず解決もできません。
無視する部下との距離を縮めるためには対話できる環境をめざしましょう。
無視する部下と話すきっかけ作り
部下の不満や不安を解消することが対処の第一歩。具体的には個別ミーティングの機会を作りましょう。あからさまに対象の部下だけを呼び出したりせず、あくまでもチーム全体でおこなうというやり方がベストです。
- 最初は険悪な雰囲気でもくじけない。
- いきなり本題に入らず全員、同じテーマにする。
- 部下の態度や言動に振り回されず凛とした態度で接する。
目的は、部下の不満や反発の原因を探ることです。最初は険悪かもしれませんが対話する環境を積み重ねましょう。
- 部下の反発心の原因を探る
- 部下の反発心を否定せずに理解する
- 部下の反発心を受け入れながら建設的な対話を行う
- 部下の反発が会社や組織なのか自分なのか対話で見極める
など、部下の気持ちに寄り添いながら原因を探ってみてください。
無視する部下と会話ができるようになったら
仮に関係性が改善しても個別ミーティングは定期的に継続することが大切です。
- 部下のコンデションを常に把握する
- 上司から寄り添う姿勢を見せる。ただし部下の機嫌取りはしない
- 部下が心を開いたら本質的な質問を投げかけてみる
信頼関係がないうちに無視する原因を聞き出そうとすると、さらに溝が深まります。まずは部下と積極的にコミュニケーションを取り信頼関係を築くことが最優先です。
他の部下に無視の原因を聞くことは避け、部下との個別の対話を通じて感情を自由に表現できる環境を作り上げることに重点を置きましょう。
会社や組織に不満がある場合
会社や組織に不満がある場合、その不満を解決するためには、まずはっきりと「できること」「できないこと」を伝えることが重要。
不満を抱えている部下やメンバーに対して会社や組織がどのようなことができるのか、そしてどのようなことができないのかを明確に伝えることで、不満の解消に向けた具体的なアクションを取ることができます。
例えば、部下が業務に不満を抱えている場合、会社はサポートや改善策を提案できます。実現が難しい場合は、理由を明確に説明して部下に納得してもらう。
部下やメンバーの不満は組織改善の機会でもあります。意見を受け入れて改善に取り組みましょう。会社や組織が「できること」「できないこと」をはっきりと伝えることで不満の解消に向けた道筋が明確になり、部下やメンバーとの信頼関係を築くことができます。
それでも部下の無視が続くようであれば
何をしても改善されないようならパワハラ行為に該当してきます。一般的には、職場での不適切な行動や言動、上司から部下への命令や批判的な発言、威圧的な態度などが挙げられます。
しかし、逆に部下から上司へのパワハラ行為も問題とされています。上司への無礼な発言や無理な要求、嫌がらせの行為もパワハラに該当。
パワハラの定義などこちらの記事で詳しく解説しています。
【経験談】わたしが出会った「距離を置いた」上司たち
わたしが会社員時代に無視とまではいかないものの、毛嫌いした上司が何人かいました。もちろん私にも原因がありましたが、とにかく「もう無理」と感じた上司の特徴をお伝えします。
仕事を依頼する相手に物を配る上司
権力を持つ人々との関係強化のため頻繁に贈り物をする上司がいました。自力で人間関係を築けない、築こうとしない感覚についていけませんでした。私の中では「餌付け上司」
監視や干渉が激しい上司
1日の行動を細かく報告させる上司に出会いました。上司から「この業務は何時から始めて、何時に終わりますか?」という具合でフロア中に聞こえる形で報告させられました。このような報告方法は恥ずかしさを感じると同時に「自分には信頼がない」という気持ちを抱き、半年後には部署異動を申し出ました。
仕事ほどほどで飲み会が大好き上司
上司は、ほぼ1日中スマホをいじっていました。会議でもただ座っているだけで何も貢献していないように見えました。しかし、夕方になると他の部署の社員や同期と飲み会の打ち合わせに忙しそうです。心の中で「給与泥棒」と思っていました。
いざという時に逃げる上司
部下やチームが困難な状況に直面したときに責任を放棄して逃げ出す上司がいました。この上司は、部下からの信頼を失いチームの士気を低下させるだけでなく組織全体の成果にも悪影響を与えました。
「いざという時に逃げる上司」が嫌いな上司アンケートでトップになる理由は、部下に責任やリーダーシップを果たさない態度です。逃げる上司は部下の期待に応えず、責任を放棄することで失望感や不信感を抱きました。
なぜ侍ジャパン栗山監督は理想の上司なのか
日本代表「侍ジャパン」の栗山英樹監督は、WBCで優勝し理想的な上司として評価されています。栗山監督はどのようなアプローチで個性豊かな集団をまとめ上げたのでしょうか。
栗山監督の「信じて・任せて・感謝する」というスタンスが鍵となったように感じました。
ほとんどの人は相手のことは信じても任せることはなかなかできません。その理由は任せた以上は責任を取る必要があるからです。栗山監督は批判があると「全て私の責任です」とコメントします。
栗山監督の「信じて・任せて・感謝する」が見れた場面
WBCのメキシコ戦の準決勝で、9回に村上選手がサヨナラ打を放ちました。この試合では、村上選手は不調だったにも関わらず栗山監督は彼を起用し続けました。
さらに、大会中に村上選手の打順が4番から5番に下がりましたが彼はふてくされたり、ふさぎ込むことなくチャレンジし続けました。このような精神力と向上心は、彼のチームメイトやファンにとっても大きな励みとなりました。
栗山監督はインタビューで「短期間で打撃の状態を上げるために、状態が良くない中で多くのものを背負うよりも打順を変えて調子を上げるため」という理由をしっかりと説明していました。彼は村上選手へも同様に伝えたことでしょう。
このようなサポートと信頼関係が村上選手の成長につながったのかもしれません。村上選手の活躍は、単なる個人の成績だけでなくチーム全体の勝利にも貢献しました。彼の積極性と努力は、チームの一体感を高め、勝利への意欲を引き出しました。
WBCサムライジャパンが教えてくれたこと
チーム力を高めるために重要視していたのは「共感力」です。共感力とは、他人の気持ちを理解する力と自分の気持ちを他人に伝える力です。人と人が本当に共感すると想像もできないほどの力が生まれます。
上司や指導者が選手や部下を信じ、サポートすることで個人の能力を引き出しチームのパフォーマンスを向上させた事例です。
監督は選手を信じ何があっても責任を取ります。選手は信頼に応えます。お互いを信頼して関係性を築くことで心理的安全性の高い組織となります。
心理的安全性とは、組織の方向性やゴールを共有し自由に発言できる状態で「これを言った干される」などのリスクを恐れずに意見が言える職場環境です。
- きちんと感謝の気持ちを伝えること。
- 可能性を信じ相手の自信を育てること。
- 誤った行動を短く叱ること。
- 感情(喜怒哀楽)を表現すること。
- チームの中で「自分に何ができるか」を考えさせること。
「自分を理解してくれている」「ちゃんと見てくれている」という心理的な安心感が信頼関係の土台になります。
【タイプ別】部下のトリセツ
部下の承認欲求を満たすことで部下のモチベーションを高めることができます。具体的には、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- 具体的な成果や貢献をほめる
- 努力や工夫を認める
- 責任ある仕事を任せる
これらのポイントを押さえたマネジメントを実践することで、部下を伸ばし組織のパフォーマンスを向上させることができます。
ほめられると伸びる部下
ほめられるとやる気が出る部下は「自分の成果を認めてもらいたい」「評価されたい」という承認欲求が強い傾向があります。だからこそ、具体的な成果をほめてあげることがとても大切。
例えば
「この資料、分かりやすくまとまっていて助かったよ。」
「このプレゼン、相手に伝わる話し方だったね。」
「この提案、素晴らしいアイデアだったよ。」など、具体的にほめましょう。
ほめる際は、部下の努力や工夫を認め「この資料の作成にはたくさんの時間がかかったんだね。」「このプレゼンの準備にはいろいろと頑張ってきたんだね。」など具体的に部下の努力や工夫を伝えることで部下のやる気を引き出しましょう。
感謝されると協力意識が芽生える部下
感謝されると協力意識が芽生える部下は「自分の貢献を認めてもらいたい」「役に立ちたい」という承認欲求が強い傾向があります。
部下の貢献を具体的に感謝して伝えることが大切です。「この仕事、本当に助かったよ。」「この提案、とても役に立ったよ。」「このアイデア、とても参考になったよ。」など、感謝の意を伝えましょう。
頼られるとやる気の出る部下
頼られるとやる気の出る部下は「自分の能力を信頼してもらいたい」「役割を与えられたい」という承認欲求が強い傾向があります。
部下に責任ある仕事を任せて自信を高めることが重要。
例えば「この仕事、君にお願いしたい。」「このプロジェクト、君がリーダーになってほしい。」「この案件、君に任せても大丈夫かな?」など、部下に責任ある仕事を任せることで部下の自信を高めることができます。
多くの管理職の方がマネジメントに悩みを抱えています。部下が思うように動いてくれなかったり、チームの雰囲気が悪くなったりといった悩みです。そんな時はマネジメントの経験豊富な著者が執筆している書籍を手に取ってみてください。
ちなみに、長谷部誠選手の軌跡を振り返りながら会社員、リーダーの心得をまとめたのコラムです。部下に無視されるという悩みを抱えている方にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。
さいごに
部下が上司を無視することは組織にとって大きな問題。部下との関係を良好に保つためには上司自身が部下の気持ちに寄り添い伴走しながら育てる忍耐力が必要です。
理想の上司になる必要はなく「いてくれるだけで安心する上司」をめざしてみませんか。