クマの出没ニュースが全国で相次いでいますね。もはや山登りやキャンプだけの話ではありません。通勤や通学など私たちの暮らしのすぐそばに危険は迫っています。
この記事では秋田県の最新情報や専門家の知見、猟友会の父の情報をもとにに旅行やレジャー先で「クマとの遭遇」を防ぐ方法や「遭遇してしまった際に命を守るための知識と対策」を紹介します。

【最重要】クマに遭遇しないための予防策

クマ対策で最も大切なのは、そもそも「遭遇しないこと」です。クマは本来、臆病で人を避けたいと思っています。
事故の多くは人がいることに気づかなかったクマと「バッタリ鉢合わせ」してしまい驚いたクマがパニックになって人を攻撃するケースです。
不意の遭遇を避けるために次の3つのポイントを徹底しましょう。
音を出して人の存在を知らせる
山林や見通しの悪い場所では常に音を立てて「ここに人間がいますよ」とクマに知らせることが不可欠です。
【注意】「鈴の音にクマが寄ってくる」は危険な誤解! 「最近のクマは音に慣れているから静かな方が安全」という話を聞くことがあるかもしれませんがこれは大きな間違いです。
音を立てずに行動し至近距離でバッタリ遭遇する方がはるかに危険。確実な方法で人の存在を知らせましょう。
単独行動を避け複数人で行動する
単独での行動はできる限り避けるようにし可能な限り2名以上のグループで行動することを心がけましょう。
複数人で一緒に行動していれば自然と会話や足音などの物音が発生しその音量も大きくなるためクマが人間の存在にいち早く気づくことができ不意の遭遇を防ぐ効果が高まります。
クマを寄せ付けない環境を徹底する
「食べ物の味」を覚えたクマは人を恐れなくなり非常に危険です。
・食べ物やゴミは絶対に放置しない:リュックのお菓子やジュースの匂いもクマは嗅ぎつけます。ゴミは密閉して必ず持ち帰りましょう。
・荷物を置いて逃げない:「荷物を置いてクマの気をそらす」という話は間違いです。クマに「人を脅せば食べ物が手に入る」と学習させてしまいより危険なクマを生み出す原因になります。
【もし遭遇したら】距離と状況別の正しい対処法

もしクマに遭遇してしまったらパニックにならないことが大切。
基本原則は「騒がず、走らず、静かに後退」です。
遠くにクマがいる場合
もしもクマがこちらに気づいていない様子であれば決して騒いだり大きな音を立てたりせず静かに、そして慎重にその場を離れるようにしましょう。
その際、クマがどちらの方向に進んでいるのかをしっかりと予測しクマの進行ルートと交差しないように注意深く移動することが大切。
特に風下の方向に回り込んでしまうと人間の匂いがクマに届いてしまいクマがこちらの存在に気づいてしまう可能性が高まります。
風向きにも十分注意を払いながら安全な方向へと静かに離れていくようにしてください。
近くでクマに気づかれた場合
まずは落ち着いてください。クマもあなたに驚いています。
クマが威嚇(いかく)のために突進してくること(ブラフチャージ)がありますが多くは途中で止まり引き返します。慌てず、後ずさりを続けてください。

威嚇突進(ブラフチャージ)とはクマの行動特性で相手の様子をうかがいながら突進し相手を威嚇(いかく)する行動です。
【絶対にNG!】クマ遭遇時にやってはいけない4つの行動
万が一の際に状況を悪化させないために以下の行動は絶対に避けてください。
× 走って背中を見せる
→ クマの追跡本能を刺激します。絶対に逃げ切れません。
× 大声を出す・騒ぐ
→ クマを興奮させパニックに陥らせる原因に。
× 食べ物の入った荷物を置いて逃げる
→ 人を襲う危険なクマを生み出す原因に。
× 子グマに近づく・写真を撮る
→ 近くに必ず母グマがいます。子グマを守るために攻撃的になり危険。
【最終手段】もしもクマが襲ってきたら

ここからは命を守るための最後の砦です。
クマ撃退スプレーを噴射する
もし携行しているなら、ためらわずに使用してください。クマの顔(目・鼻・口)をめがけて噴射します。風向きで自分にかかる可能性があっても命を守ることを最優先に行動しましょう。
すでに欠品も多くなっていますがこの商品が推奨されています。猟友会に所属する父の話ではヒグマを撃退するには実際の経験上2本は必要だとのこと。
噴射可能時間が短いため使うとすぐに無くなる消耗品であることを念頭に置いて複数本を携行することをおすすめします。
「防御姿勢」で急所を守る
スプレーがない、または間に合わない場合は即座に地面にうつ伏せになり両手で首の後ろをがっちり組んでください。これは致命傷になりやすい首・頭・顔面を守るための最も重要な姿勢です。

クマの攻撃は人を食べるためではなく自分を守るための防衛行動なんですよね。クマは人間の急所をよく知っていて首から上(目、耳、顔など)や太ももといった柔らかい部分を狙ってきます。
クマが立ち去るまでこの防御姿勢を保ち続けて急所を守りましょう。攻撃が長引く原因は抵抗したり暴れたりすること。
恐怖で体が動いてしまうかもしれませんができる限り静かに耐えることなんです。
【備えあれば憂いなし】持っておきたいクマ撃退グッズ
山や自然の豊かな場所へ行く際は万が一に備えて対策グッズを準備しましょう。「音で知らせるグッズ」と「いざという時に撃退するグッズ」の両方があると安心です。
クマ鈴は音が大きく響き渡るものを選び複数個つけることでより効果的にクマに人の存在を知らせることができます。
爆竹は音が大きく響き渡るものを選び複数個携行することでより効果的にクマに人の存在を知らせることができます。
クマに遭遇する可能性のある場所や時期
クマの事故や出没を防ぐためにはクマの生態や行動について正しく知ることが大切。一般的に春と秋はクマが食べ物を探すために活発に動き回るため特に注意が必要です。

これらの時期に加え「山林や河川沿い」「人の手が入りにくい藪地」「農地の周辺」「実のなる庭木」のある場所はクマとの遭遇の可能性が高まります。
参考資料:秋田県のパンフレット(2024年7月)特集:クマを知って、被害を防ごう!
クマは嗅覚が鋭いため臭いに誘引されます。生ゴミなどを野外に放置しないようにしましょう。
クマの通り道や隠れ場所をなくし人間の活動エリアから遠ざけることが重要です。
車に乗ってる時にクマに遭遇したら

ドライブ中に突然、クマが道路に現れることもあります。
まずは深呼吸。同乗者がいたら「大丈夫‥」と落ち着かせる(自分も!)それから次の行動を意識してください。
- 距離を取り近づかない: 車から降りるのは絶対にやめましょう
- 窓を閉めてドアをロックする: クマが近づいても安全な空間を確保
- 速度を落としながらゆっくりと通過する: 急な動きはクマを刺激する可能性があります
- 警察に通報し情報を提供する: 他の地域住民への注意喚起のためにも目撃情報を共有
子グマが見えても母グマが近くにいて攻撃的になる可能性があります。
とにかくその場をゆっくり離れましょう。

クマは追いかけるという習性があるため車でバックすると車に近づいてくる可能性があります。バックするしかない状況のときはバックしていることが気づかれない速度でゆっくり移動しましょう。

動物の道路標識や看板が設置されている場所はクマが出没しています。意識しながら早めに回避してくださいね。
新種のクマの特性や全国のクマ出没マップをまとめています。
人間の生活圏でクマを寄せ付けない環境づくり

参考情報として山間部にお住まいの方々が日常的に実践されているクマ対策についても紹介しておきますね。
今はクマの出没エリアは山間部だけにとどまらず住宅街や市街地といった私たちの生活圏にまで広がってきている状況。
けっして人ごとではありませんよね。地方に住んでる家族や知り合いの方にも同じように注意喚起が必要です。
さいごに

クマに遭遇したときに「慌てないこと」が大前提ですが…それがいちばん難しいですよね。登山やキャンプ、ハイキングなどアウトドアを思い切り楽しむためにはクマ対策と正しい知識が必須。
クマとの遭遇…もはや他人事ではありません。いつどこでクマと出会うかわからない状況です。でも正しい知識と準備さえあれば適切な対応ができて、被害も防げるんです。自然の中での時間を安全に、そして心から楽しむために――山に入る際は必ずクマ対策の準備、忘れずに。





